
不当利得
不当利得 とは、正当な理由 (法律上の原因) なしに他人の財産によって財産的利益 (利得) を受け、これによって他人に損失を及ぼすことを言います。
ヤミ金行う違法な貸付は、この不当利得に該当します。
不当利得の概要
不当利得を得た者は、返還する義務があるため、ヤミ金からお金を借りて返済を続けていた場合は、そのお金の返還を請求することが出来ます。
第703条(不当利得の返還義務)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
703条では不当利得の一般類型たる要件と、善意の受益者の利得返還義務について規定しています。
悪意の受益者についての返還義務は第704条に規定されています。
第704条(悪意の受益者の返還義務等)
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
ヤミ金融は悪意の受益者であるため、民法第704条に従い、被害者に対して利息や損害賠償を支払う義務があります。
不当利得の特殊類型
民法は上記の一般不当利得のほかに、第705条から第708条に特殊な類型の不当利得の規定を置いています。
ここでは特殊な類型の不当利得に関して少し触れておきます。
第705条(債務の不存在を知ってした弁済)
債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない。
民法705条には非債弁済に関する規定が明記されています。
債務が存在しないことを知りながら(誰かに強制されたわけではなく任意で)債務の弁済として給付をすること(返済金を支払う)を非債弁済と言います。
非債弁済の例としては、AはB、Cのそれぞれから10万円ずつの借金を負っていました。返済日になったため、B、Cそれぞれに10万円の返済(債務の履行)を行おうと考え、ATMから振込みでBに対して返済を完了しました。
次にCにも振込みをしようと考えていたところ、先の返済はCに対してのものであったと勘違いをした結果、次に返済する必要があるのはBであると判断ミスをしてしまい、最終的にBに二重に振込みをしてしまったという例です。
本来であれば、法律上の原因がないとして「不当利得返還請求ができる」はずですが、このような場合は「返還請求できない」とされています。
第706条(期限前の弁済)
債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない。
債務者が弁済期前に債権者に対して弁済したお金を、「期日までまだあるから返して欲しい、また期限には返すから」と言って取り戻すことが出来ないというものです。
通常、このようなケースにおいては返還請求をすることは出来ないとされています。
第707条(他人の債務の弁済)
1.債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。
2.前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない。
債務者でない者が間違って弁済した場合の規定をしています。
第708条(不法原因給付)
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
不法な原因に基づき行なった給付は、返還請求することは出来ません。ヤミ金融が行う違法金利での貸付が、この不法原因給付に該当します。
不法原因給付について詳しくは、不法原因給付(民法第708条)のページをご参照下さい。
不当利得に関する判断や対応は、法律の専門家に相談することをおすすめします。
専門家に依頼すれば、今までヤミ金へ支払ったお金が返って来る場合があります。